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受賞歴:
2004年、第1回スクウェア・エニックス小説大賞『入選』
2008年、第5回トクマ・ノベルズEdge新人賞『徳間デュアル文庫特別賞』
2017年、第11回HJ文庫大賞『銀賞』
2017年、ジャンプ小説新人賞’16 Winter 小説フリー部門『銀賞』
2017年、第30回ファンタジア大賞 『金賞』

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なんちゃってダイジェスト~パラレル家族計画~

どうも、はむばねです。
いよいよ明日発売ですね!
というわけで、恒例のなんちゃってダイジェストだよー\(^o^)/







――鈴木大和と藤井結衣は幼馴染である。



「今日の私、昨日と違うのわかる?」
「んー?」



――お互い意識しながらも、少しずつ距離を縮めていき……ということは特に無く。



「あぁ」
 しばらく大和がじっと結衣を見つめ、結衣の頬が赤く染まり始めた辺りで大和がポンと手を打った。
「人類になった?」
「じゃあ昨日までの私は何だったの!?」



――結衣だけが意識して大和がそれをスルーするような関係であった。



「うわ、やっぱり二人とも若いなー……っと、いけないいけない」
 少女は大和と結衣を見て何やら感慨深げに呟いてから、コホンと一つ咳払い。
「どうも、初めまして……と言うのが、この場では正しいんだろうね。私としては、ちょっと変な感じだけど」



――そんな二人の前に、一人の少女が現れる。



「私は、鈴木弥生」



――彼女は自分をこう紹介する。
――曰く。



「この時代から見ると未来から来た、あなたたち二人の娘です」



――自分は、二人の娘であると。



「やっちゃん、知らない子に玄関の鍵の場所を教えちゃダメだよ!?」
 機密情報をポロンと漏らす大和に、結衣が慌てて注意する。
「いや、だって娘だって言ってるし……」
「この子の事、信じてるのか信じてないのかどっちなの……?」
「信じたい……俺だって信じたいさ、あいつの事……!」
「なんで仲間の裏切りを目撃しちゃった苦悩みたいな感じになってるの!?」
 突如全力で横道へと逸れ始める大和と結衣。
「なんつーか、はっちゃてるね若い頃の父さんと母さん……」
 二人を見る少女は、完全にアホの子を見る目だった。

「ちょっと待って、この時代の父さんって文系だったの? そこからどうやったら物理学者になんの?」
「知らねーよ……この後、運命的な出会いでもあるんじゃねーの?」
「母さんとの?」
「十六年以上も前にもう出会ってるよ!?」
「新しい母さんとの?」
「自分の母親を過去の女扱いしないで!?」
「まぁ、未来の過去の女の話は置いといてだな」
「ややこしいよ!」

「そして私は、決意した」
 弥生が、グッと拳を握った。
「ケンカで、全国制覇を遂げようと」
 その顔に浮かぶのは、楽しげな笑みだ。
「その発想の飛びっぷりは、流石やっちゃんの娘だね……」
「確かに俺は、中学時代に八艘飛びを会得しようとアヒルボートからアヒルボートに飛び移ろうとしたところ管理人にド叱られた男だが……」
「あったね、そんなこと……」



――彼女の目的、それは『最強』と呼ばれた自らの母、全盛期の藤井結衣と戦うこと。
――その目的を実現するため自らの手でタイムマシンを作り上げた天才少女、鈴木弥生はついに藤井結衣と相まみえた。
――念願叶った弥生は、結衣に向かって宣戦布告し。
――そして。



「お断りします」



――全力で断られた。



「え~? なんでって~、それは~」
 デヘヘ、とだらしない笑みと共に結衣はチラチラと大和に視線を向ける。
「やっちゃんが、暴力的な女は好きじゃないって言うから~」
 ちなみにその時、大和は塀の上を歩く猫を観察していた。
「そ、そんな彼氏が変わる度に彼氏に合わせて趣味を変えるようなノリで……?」
「やだもう、彼氏だなんて」
 愕然とした様子の弥生。結衣は結衣で照れ照れ笑いながら大和の肩をパタパタ叩いているが、大和は猫の気を引こうと手を伸ばしており聞いちゃいない。



――わざわざタイムマシンまで自作して過去の母へ挑戦しに来た弥生としては、納得できるはずもなく。
――彼女は、考える。
――そして、結論付けた。
――結衣が戦わないのは大和の好みに合わせるためだと言う。
――ならば、その理由をなくしちゃえばいいじゃない!
――と。



「あ、あぁ……えーと、前に俺を女子カヌー部に勧誘してきた糠川可抜子さんでしたっけ……?」
「速攻で娘の顔を忘れないで……?」
 名前を思い出せずにオドオドする体で尋ねた大和に弥生が半笑いとなった。聞きようによっては修羅場とも捉えられかねない言葉に、周りが少しギョッとなる。ギョッとなった後、その中心にいるのが大和だと見るや「なんだまたか……」といった表情となり散っていった。
「あと名前適当すぎとか、なんで父さんを女子カヌー部に勧誘すんのとか、色々ツッコミ所はあるけど……まぁいいや」



――行動指針は、大和の他の女性を結びつけること。
――そして、行動内容は。



「初めまして。わたしくしは、鈴木真琳」
 丁寧なお辞儀と共に、少女はそう名乗った。四十五度の、最敬礼。それだけで絵になる。
「鈴木大和と……」
 顔を上げた少女……真琳は、結衣の方にチラリと目を向け少し申し訳無さそうな表情と共に。
「西園寺凛の、娘です」
 そう、言い放った。



――大和が別の女性と結ばれる世界線から、娘を連れてきてそれぞれの母親を応援させること。
――対象は二人。



「ちなみに、西園寺はお嬢様に憧れてるだけのド庶民だからな。市役所勤務の父とスーパーでパートしてる母親の間に産まれたサラブレッド的ド庶民だ」
「あ、そうなの? あの髪型で?」
 大和の説明を受け、弥生が意外そうな表情を浮かべた。
「っさいわね、ほっときなさいよ!」
 事実をばらされた凛はお冠の様子である。
「ただし、母は神速のレジ・マイスターと呼ばれるスーパースーパー店員だ」
「スーパースーパー店員てややこしいね……」
 弥生が微妙な表情を浮かべた。
「ていうかウチのお母さん、そんな風に呼ばれてるの……?」
 なお、母の知られざる一面を知ったらしい凛も同じく微妙な表情となっている。
「ていうか、なんでアンタがそんなこと知ってんのよ!」
「西園寺母を除く他の店員さん全員に対して入念に聴きとり調査を行ったからな。あぁ、そういや今度主任に昇格するらしいな、おめでとう」
「アンタ、なんで人んちの母親のこと娘より詳しいのよ……」
 ツッコミを入れてから、「あっ!」と何かに気付いた表情に。
「まさか外堀から埋めていこうとかそういうつもりなわけ……? や、やめてよね、そういうの!」
 迷惑げな口調ながら、その口元はニマニマと緩みっぱなしだ。なおこの場合、凛の母親本人とは接触していないため特に外堀は埋まっていないと思われる。



――大和も所属する生徒会、その会長たる西園寺凛。



「ね、ねぇ鈴木……」
 おずおずと、大和に話しかける。
「ん? 今日はハート柄のトランクスだが?」
「誰がアンタのパンツ情報なんて知りたいと言った!」
 質問を察して先に答えた大和だが、全く察せていなかったようである。
「なんだ、違うのか。すると西園寺のパンツの話だな? なら、水色と白のチェック柄だよ」
「知っとるわ! って、なんでアンタが知ってんのよ!?」
 叫んでから、凛はますます顔を赤くして自分のスカートを抑えた。ちなみに大和が凛のパンツの柄を知っていたわけではなく、適当に言ったら当たっただけである。
「わたくしでしたら、今日は黒の紐パンですわ」
「娘のパンツ情報も知りたくないわ! ……え、ていうか紐パン……?」
 ツッコミを入れた後、凛は驚愕の目で真琳のスカートを凝視する。
「冗談です」
 と、真琳は微笑みを一切動かすことなくそう言った。
「え、あ、そう……」
 微妙な表情で、凛は真琳の顔とスカートの間で視線を数度往復させる。その頬に一筋汗が流れた。
「鈴木が二人に増えたみたいで疲れるわね……」
 げんなりとした調子でため息を吐く。
「まぁ、実際鈴木は二人に増えてるしな」
「というかお母様も将来鈴木になるのですから、潜在的鈴木率も含めればこの部屋の中は今鈴木率一〇〇パーセントですわ」
「潜在的鈴木率って何……?」



――その娘、鈴木真琳。



「しっかし、今更ながら信じられないような状況ね」
 その心境を代表するかのように、凛がポツリと漏らす。
「確かに、まさか結衣が俺の幼馴染だったなんてな……」
「そこは疑いようもないでしょ!?」
 十六年強に及ぶ関係に疑惑の目を向けられた結衣が驚愕した。
「んじゃなくて……あの子たちが未来から来たとか、あと、私がその、鈴木と……子供を、作るとか」
 言葉の最後の方で、凛は顔を赤くして俯いた。
「ま、現時点で否定するに足る根拠がないことだけは確かだからな。なら、一旦信じてみるのもいいだろう」
「先輩がそう言うのであれば、私は信じます」
 大和の意見に、即座に翔子が追随する。
「前々から思ってたけど、アナタ鈴木のこと信じすぎじゃない?」
 凛が胡乱げな目を翔子へ向けた。
「なにせ、俺と信じるとかなりのご利益があるからな」
「具体的には?」
 凛の胡乱さを増した目が、横入りしてきた大和に向く。
「胸が大きくなる」
「じゃあご利益発生してないじゃない」
「どういう意味ですか」



――生徒会書記にして大和の悪友・横山翔太の妹、横山翔子。



「あ、弥生ちゃんも学者さんなんだよね! 私と同い年なのに凄いな~!」
 琴代に尊敬の眼差しを向けられ、弥生は微妙な表情となった。
「いや、学者ってわけでもないけど……」
「じゃあ、発明家?」
「発明家って、そもそも職業なの? つーか私、今は無職だよ。ここ二年くらい、全国喧嘩巡りの旅してたし」
「そうなんだ~」
 割とはっちゃけたことを言っているはずの弥生だが、琴代は気にした様子もなくフワフワと頷いている。
「けど、牧場主に社長に物理学者かぁ。流石やっちゃん、多才だね!」
 結衣が、自分の事ように嬉しげな笑みを大和に向けた。
「そうだな。結衣なんて、格闘技のセンスと運動能力と顔と家事能力と英語の成績と明るさと前向きさと粘り強さと気遣い上手なのと交友範囲の広さくらいしか取り柄がないもんな」
「いや父さん、母さんのこと理解しすぎでしょう……」
 貶す体でありながらスラスラ結衣の長所を述べる大和に、弥生は半笑いの表情となった。
「やだもぅ、やっちゃんったら!」
 結衣本人は、一層嬉しげな笑みでクニクニと大和の腕を突いている。
「これ、ママに勝ち目あるのかな……」
「どうでしょう……」



――その娘、鈴木琴代。



「でもでも、男の子の一人暮らしの家に、女の子が泊まるなんてダメだよ!」
「いや、父さんだし」
「お父様ですし」
「パパだし~」
 結衣が抗議するも、三人娘は涼しい顔である。
「ちょっと待って、弥生ちゃんたちはともかく、やっちゃんは今日初対面でしょ! 娘だとわかっていても、同世代の女の子にドキドキ……みたいなの、あるよね!?」
「娘だし、そういうのはないな」
 矛先を大和に向けるも、大和も涼しい顔であった。
「娘を受け入れる速度が早過ぎる!? 世間一般のお父さんは、赤ちゃんを自分の子だと受け入れるのにもしばらく時間がかかるって聞くのに!」

「ところでさー」
 二杯目のカレーをよそいながら、弥生が何でもない事のように。
「ウチらの母さん三人の、父さんへの想いが明らかになったわけなんだけど。父さん、どうすんの?」
 投下された言葉に、場の空気が凍った。
 唯一の例外は、変わらずカレーをモグモグ食べている大和と真琳と琴代だけである。全く唯一ではなかった。というか、凍ったのは結衣だけであった。
「別に、どうもしない。今まで通りだ」
 大和が平然と答える。
「え~? パパ、女の子の想いを知ったのに何も行動しないなんて酷いよ~」
 抗議する琴代だが、その声は批判というよりも揶揄の調子である。
「つーか、明らかになったも何も前から知ってたしな」
「ですよね~」

「意外とラブコメイベントって起きないもんだね……」
「だから、父娘じゃラブコメイベントなんて起きないって言ってんじゃん」
 結衣が足を縮めたスペースに、チャポンと浸かった。湯船の中で結衣と向かい合う形である。
「母さんの方こそ、てっきり父さんの直後に入って残り湯堪能する! とか言うかと思ったよ」
 冗談めかした調子で、弥生。
「その発想はなかった……弥生ちゃん、やはり天才か……!」
 しかし結衣は、何やら衝撃を受けた様子である。
「……いや、やめてね? 人としての尊厳は捨てないでね?」
 真剣な顔で弥生が止める。
「あ、あはは……やだな、冗談だよー」
 笑って否定する結衣だったが、先程の目はマジだったと弥生は見ている。



――大和の日常に、三人の娘が加わった。



「おじゃましま~す!」
 元気の良い挨拶と共に、琴代が翔子に続いた。
「お、いらっしゃーい」
 リビングの前を通りがかったところで翔太が琴代に挨拶する。
「おじゃまします、おじさん!」
 それに対して、琴代は屈託の無い笑顔を返した。
 琴代からすれば、翔太は叔父に当たる。その呼称は、間違っていない。それが、この時代でなければ。
「お、おじさん……?」
 笑顔のまま固まった翔太を尻目に、翔子と琴代は翔子の部屋に向かっていった。

「私の秘めたる恋の話はこんなところよ。初めて誰かに話せて、楽しかったわ」
 清々しい気持ちで、凛は真琳に笑顔を向ける。
「それなのですが……」
 一方、真琳は浮かない顔に戻っていた。
「お母様、大変言いにくいのですが……」
 しばし、言い淀み。
「お母様の恋は、全く秘められていないと思います」
 覚悟を決めた様子で、そう言い放った。
「ん? どういうこと?」

「じゃあじゃあ、私がやっちゃんの事を好きになったエピソードとか聞いちゃう? 聞いちゃう?」
 目を輝かせながら、結衣が身を乗り出した。
「いや、そういうのいいから」
「もうちょっと自分の両親に興味持とう!?」
 すげなく断った弥生に、結衣は軽く涙目になる。
「今更、この時代の母さんの過去話聞いてどうすんのさ……」
「でもでも、何かしらやっちゃん攻略のヒントが見つかるかもしれないよ!?」
 面倒臭さげな弥生に、結衣は食い下がった。
「あーもう、じゃあいいから勝手に話しなよ」



――それぞれの母娘が大和を攻略せんと作戦を練る。



「いいえ、今来たところです」
 とりあえず大和の格好はスルーし、お決まりのセリフを言っておく。密かに、翔子の中で言ってみたいセリフベストテンにランクインしていたフレーズだ。ちなみに現在待ち合わせ時刻の十分前。実際、翔子も五分程度しか待っていない。
「そうか、俺も今来たところだ」
「知っています」
 先に来ていたのだから、当然である。
「あれ? 横山、その格好は……」
 と、大和は翔子を見下ろし驚愕の表情――大半が鉄仮面に覆われていて見えないが、恐らく――を浮かべた。
「よ、横山お前、女だったのか!」
「そのくだりは藤井先輩でもうやったと聞いていますが」

 いきなり目隠しされ、「きゃっ!?」と驚きの声を上げることとなる。
「だーれだ?」
 次いで、そのフレーズにドキッと凛の心臓が高鳴った。
「そう、誰だったんだろう、あの声は……どこか、聞き覚えがあるような……あれ、ここはどこだ!? 僕は、さっきまで自分の部屋にいたはず……!」
「なんで異世界に召喚された人みたいになってんのよ!」
 そして続いた謎のセリフに、凛は目に当てられていた手を振り払って振り返った。
「って、誰よ!?」
 更に、そこにいたのが想像していた姿でなかったため二度目のツッコミを入れる。
 そこには、見覚えのない……こともない、女性らしき人物が立っていた。

「そうかもしれないけど……でも、今日は普段のお買い物とかじゃなくてデートなんだもん。ほら、私の格好とか見て何か言う事とかないの?」
 拗ねて口を尖らせながら、大和の前でクルンと回る。
「ふむ……」
 顎に指を当て、大和は結衣の全身に視線を這わせた。何となく照れくさくなり、結衣は手を後ろにやって視線を逸らす。
「上が四七八〇円、下が三七八〇円、サンダルが六四八〇円ってところか」
「そういう事を聞いてるんじゃないよ!? そして目利きが正確すぎる! 何なのその能力!」
 ピッタリ値段を言い当てた大和に驚愕した後、結衣の中に憤りが湧いてきた。
「もう! そうじゃなくて、もっとこう……エッチな気分になっちゃうとか、ないの……?」
 不安と共に尋ねた結衣の全身を、再び大和が観察する。
「いや、どっちかっつーと鳥取に行きたいなって気分になるな」
「どっちかっつーとも何も、そんな気分は選択肢に入ってないよ!?」



――その尽くを、大和が打ち砕く。



「いいえ、家では焼肉老中と呼ばれています。ちなみに真琳さん、先程のお茄子を勧めるタイミングは完璧でした」
「それはありがとうございます」
 翔子にお褒めの言葉を頂き、真琳は優雅に微笑んだ。
「ていうか結構偉い役職なんだね……」
「将軍ではない辺り、若干の謙虚さが表れてる……のかしら……?」
 なお、翔子の回答に結衣と凛は微妙な表情となっている。
「ちなみに俺は、体育でサッカーをやる際には守護大名と呼ばれている!」
 なぜか張り合うように、大和が自分の事を親指で指した。
「やっちゃん、サッカーの時走るの面倒だからっていっつもキーパーやりたがるもんね……」
 結衣が苦笑を浮かべる。
「てか、そこは普通守護神じゃないの?」
「流石に、人の身で神を自称するわけにもいくまい」
 呆れるように言った凛に対して、大和は「やれやれ」と肩を竦めた。凛が若干イラッとした表情となる。
「流石パパ、謙虚な姿勢を忘れないね~」
「謙虚さを発揮する場面と方向性と加減、全部間違えてるけどね……」
 琴代は変わらずニコニコと笑い、弥生は半笑いとなっていた。

「藤井先輩、頭は大丈夫ですか?」
 変わらず黙々と肉を焼き続けていた中、ふとした調子で翔子が結衣に尋ねた。
「なんか、それだと私の頭がおかしいみたいだね」
 冗談めかした調子で結衣はそう返す。
「すみません」
 すると翔子が頭を下げてきたので、結衣は慌てて手を振った。
「いや、別にそんな本気で言ったわけじゃ……」
「そういう意味も込めて聞きました」
「そういう意味も込められてたんだ!? 大丈夫だよどっちの意味でも!」
 半ば叫ぶような結衣の回答に、翔子は無表情ながら少しだけ不思議そうに首を傾げる。
「そうですか……エリンギを避けるとか、正気の沙汰とは思えないと思ったのですが」
「横山さんの、そのエリンギに対する謎の信頼は何なの……?」
「確かに、横山のエリンギに対する信頼は世界でもトップレベルだからな」
「やっちゃんのその、横山さんのエリンギに対する信頼への信頼もどういうことなの……?」
 半笑いとなった結衣の肩が、ポンと叩かれた。
「傷も残ってないみたいだし、よかったわね」
 凛が、結衣の後頭部を撫でながら微笑む。
「まぁ、アナタ的には傷物になっちゃったからもう鈴木に貰ってもらうしかないってな感じで迫れる方がよかったのかもしれないけど」
 微笑みをイタズラっぽいものに変えた凛に、結衣は驚愕の表情となった。
「その発想はなかった……流石生徒会長、人を陥れることにかけては天才か……」
「ちょっと、私が人を陥れることで生徒会長の地位を確保したみたいな言い方やめてくれる!?」

「そういやさっき藤井さんが物凄い勢いで走ってったけど何か……」
 何か問いかけようとしている凛が、言い切るより前に。
「弥生、横山を確保!」
「りょ、了解!」
 指示を出すと同時に走りだした大和に一瞬遅れ、弥生も駆け出した。
「あったの……って、何? え、何? どうしたの!?」
 突如自分に向けて全力ダッシュしてきた大和に、当然ながら凛は面食らった様子だ。半歩後ずさったものの、そのままの状態で固まっている。そんな凛の腹を大和がタックルするような形で救い上げ、そのまま肩に担ぐ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? いきなり何すんのよ!?」
 ジタバタと藻掻くも、大和にガッチリホールドされており凛の身体がズレるようなことはない。
「ちょっと失礼しますねっと」
 それを横目で見ながら、弥生も同じ流れで翔子を担ぎあげた。こちらは、拍子抜けするほど抵抗なくあっさりと成すがままだ。肩の上に載せられても、微動だにしていない。
 そんな対照的な二人を担ぎ、大和と弥生はそのまま走りだした。
「ちょっとどういうことよこれ!? どうせならお姫様抱っことかにしなさいよ!」
 早くも肉体的な抵抗は無駄と悟ったらしい凛は先程のようにジタバタこそしていなかったが、口での抵抗は続けている。既に関係のない要求が半分くらい出ている辺り、これも普段の大和への対応に慣れている結果なのかもしれない。
「贅沢を言わないでください、西園寺先輩。私も、出来るなら鈴木先輩に俵担ぎされたいんですから」
「ていうかアンタはなんでこの状況で完全なる無抵抗なの!?」
「鈴木先輩のやることですので」
 もっとも、完全に身体を弥生に預けきっている翔子の諦観っぷり程ではなかったが。



――果たして、大和のハートを射止めるのは誰なのか。
――そして。



「それに、なんだか結衣さんはパパが作ってる『壁』の秘密も知ってそうだし~」
「壁……?」
 言っている意味がわからず、眉を顰める。
「うん、なんていうかな~」
 考える時の癖なのか、琴代の視線が上方へと移る。
「別に男の子がみんな狼さんだなんて言うつもりはないけど、それにしても複数の女の子から、こんなに露骨な好意を向けられて何もアクションがないっていうのは何か理由があるんじゃないかな~と思うの」
「露骨……まぁ、そうですね」
 結衣と凛の顔を思い浮かべ、翔子が頷いた。傍から見れば翔子の態度も割と露骨と称して差し支えないのだが、近くて見えぬは睫というやつである。

「正直意外だったけどアイツ、仕事できんのよねー。将来会社経営してるって言われても、まぁ納得はいくわ」
「お父様の有能さを知っていたから副会長に据えようとしたのではないですか?」
「んーん? 単に二年になって鈴木と別のクラスになったから、鈴木と一緒にいられる時間が欲しかっただけ」
 当時を語る凛にを見る真琳は微笑ましげだ。
「なんと言いますか、一生懸命ですが不器用だったのですね」
「まぁね」
 真琳の割と的確な分析に、凛は苦笑を浮かべた。
「んで、思ったよか鈴木が優秀だったのは嬉しい誤算だったわけなんだけど……その癖アイツは、人前ではチャランポランなのよねー。偽悪的っつーか、爪を隠したがるっつーか」
「それが、お父様の纏う『壁』のようなものの正体なのでしょうか?」
 奇しくも同じ頃、横山邸で琴代が発しているのと同じ意見に、凛が勢い良く身を起こした。
「……気付いたんだ。昨日一日だけで」

「母さんは、父さんの事情を知ってるんだよね?」
 否定は許さぬ、という雰囲気で弥生が尋ねる。
「じ、事情って、何の事かな~?」
 露骨に誤魔化しながら、結衣は視線を彷徨わせた。
 弥生が小さく嘆息すると、結衣がビクッと身体を震わせる。
「父さんが、綺麗どころに囲まれても手を出さない理由……もっと言うと他人、特に女の人に対して『壁』を作ってる理由を。母さんは、知ってるんだよね?」
 真っ直ぐ結衣を見る弥生の表情は、真剣そのものだ。
「……もう、そこまでわかっちゃうんだ」
 苦笑気味ながら、結衣も真っ直ぐ弥生を見た。
「うん、知ってるよ」
 そして、ゆっくり頷く。
「……でも、言う気はない?」



――大和が誰の気持ちも受け入れず。



「あのさー」
 先程言えなかった言葉を、先程考えていたのとは別の言葉に繋げるため口にする。
「今まで私は、父さんは母さんの事を小五月蠅く構ってくる妹みたいな感じに思ってて適当にあしらってるんだと思ってたんだけどさ」
「そんな風に思ってたんだ……」
 弥生の述べた印象に、結衣はどこか釈然としない表情である。
「でももしかして、それって違うの? 父さんにとって、母さんは特別な意味を持つ存在だったの?」
 先程のやり取りから、半ば確信を込めて問う。
「それで、それは父さんの人と距離を置く『壁』と何か関係があるの?」



――そして、常にボケ続ける理由とは?



「できれば、愛情を注ぐ対象はママにしてくれると嬉しいな。ママの身体は小さいけど、パパの全てを受け入れる大きさがあると思うよ~」
「ふふ。それを言うならばお母様にはお父様と正面からぶつかり合い、共に高め合っていかんとする強さがありますわ」
「それなら母さんだって…………………………」
「……なんでそこで言葉止めるの!?」
「ごめん、母さんに何かそういうのあったっけ?」
「あるよ、ありまくるよ!? 大きいし強いよ!?」
「胸と腕力が?」
「なんで私だけ物理的特徴なの!?」



――主人公がそれぞれ別の女性と結婚する並行世界的な未来から来た娘3人が自身の母親と主人公の仲を応援する系ラブコメ。



「はい。割と鈴木先輩の手伝いでモフモフしてます」
「ずるいわよ二人で! 私にもモフモフさせなさいよ!」
「仕方ないな、じゃあ西園寺には結衣をモフモフする権利をやろう」
「勝手に私をモフモフする権利を譲らないで!?」
「いらないわよそんなもん!」
「いらないって言われるとそれはそれで傷つく!」
「では、私が貰いましょう」
「よし、譲ろう」
「だから譲らないで!? ちょ、横山さん、モフモフって胸を……? って、痛っ!? 何か憎しみが篭ってない!?」


――ここに、開幕。


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