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受賞歴:
2004年、第1回スクウェア・エニックス小説大賞『入選』
2008年、第5回トクマ・ノベルズEdge新人賞『徳間デュアル文庫特別賞』
2017年、第11回HJ文庫大賞『銀賞』
2017年、ジャンプ小説新人賞’16 Winter 小説フリー部門『銀賞』
2017年、第30回ファンタジア大賞 『金賞』

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なんちゃってダイジェスト~カンスト勇者の超魔教導3~

「やぁ、こんにちは」



──かつて、そんな言葉と共に始まった高関桐の旅は。



「大丈夫だよ。この街も、皆も。大丈夫」



──そんな言葉を最後に、終わりを告げた。



「起きた?」
 どこか楽しげな女性の声が耳に届いた。
「アナタが居眠りなんて、珍しいわね?」
 隣に視線を向けると、メイの笑顔が目に入ってくる。
 そこでようやく、桐は自身が眠っていたのだと自覚した。
 少しだけ意識の空白があって、それから現状を思い出す。学園都市フロートへの道すがら、エイムが担ぐ板の上に座ったままで寝入っていたようだ。
(……居眠り? 俺が?)



──そして、新たな同行者と一緒の旅は。



「お前、『何』だ?」
 その問いに、エイムは笑った。
 この世の邪悪を凝縮したような、怖気を震わせる笑みだった。
「既に、わかっているのだろう?」
 そう言うと同時、エイムの全身から【黒】が吹き出す。
「……魔王」



「キリ……?」
「えっ……?」
 不安になって呼びかけると、キリはその顔を驚きに染める。
「俺のこと、ご存知なんですか……?」
「はっ……?」
 その返答に、思わずメイは疑問の声を上げた。
「あの……」
 言いづらそうに、口ごもるキリ。
「ここは、どこですか……? 皆さんは、どちら様なんでしょう……?」
 そして、続いた言葉に。
「………………はっ?」
 メイは、もう一度疑問の声を上げることとなった。



──今また、新たな局面を迎えることとなった。



「いえ、雰囲気はだいぶ違うわね。今みたいなことを言っても、全く動揺した様子もなかったし。おかげで、なんだかこっちが負けたような気分になったものよ……ていうか、たぶん私のことを女性として見てなかったと思うのよね……」
 更に深まる苦笑。
「いえ、そんなことは絶対ないと思います!」
「そ、そうかしら……?」
 しかし返ってきたキリの強い断定口調に、思わず面食らってしまう。
「そりゃそうですよ、他ならない俺自身が言うんだから間違いないです!」
「そう……? もしそうだったら、嬉しいんだけれど……」
 願望混じりにそう呟いたところ、キリがパチクリと目を瞬かせていることに気付いた。
「えっと、その……そうだったら嬉しいっていうのは……もしかして……」
「やっ、違っ、変な意味じゃないからね!? ほら、女性としての矜持っていうか、そういうのが傷付くから的なアレだから!」
「そ、そうですよね! そういうアレですよね! や、別に勘違いとかしてないッス!」



「ししょー、記憶そーしつです? なら、ボクとお揃いなのです!」
「えっ……?」
 如何にも嬉しそうに笑うエイムの言葉に、今度はキリが疑問顔となった。
「エイムちゃんも、アナタと出会う前のことを何も覚えてないらしいのよね」
「そうなんだ……」
 エイムに向けるキリの目が、同情的な色を帯びる。
「君も、大変なんだね」
「? 何も、大変ではないのです?」
 疑問符を頭に浮かべ、コテンと首を傾けるエイム。
 師が何を言っているのかわからない、といった感じの表情だ。
「ししょーとの記憶があるから、その前の記憶なんていらないのです!」
「そ、そうなんだ……?」



「ホカホカの炊きたて白米を生成する魔法なのよ、第二五五階位魔法《愛しき純白と流るる母の舞踏》っていうのは。実際、私もこの目で見たけど」
「えっと……」
 目頭を押さえ、キリはゆっくりと首を横に振った。
「ハクマイ、っていう名前の強力な道具を生成するとか?」
「いえ、普通に食品の白米よ」
「食べると何かしらの強力な能力を得られたり?」
「いえ、普通にそういうこともないはずよ」
「あっ、こっちの世界じゃ白米って目茶目茶貴重とか!?」
「いえ、普通に出回っているわ。あんな風に調理したのを見るのは初めてだったけど」
「……なるほど」
 再度目頭を押さえ、首を横に振るキリ。
「つまり、どういうこと?」
「つまり、普通に炊きたての白米を生成するだけの魔法ってことよ」
「どういうこと!?」



──記憶を失ったキリに戸惑いつつも、新鮮な印象を抱くメイ。



「エイムちゃん、疲れてないかな? 大丈夫?」
「はいです! 全然です!」
 キリの興味も、既に廃村からエイムに戻っているようだ。
「疲れたらすぐに言うんだよ?」
「はいです!」
「水分補給はこまめにね……はい」
「はいです! んぐっんぐっ」
「そうだ、おんぶしてあげよっか?」
「はいです!」
 キリから受け取った水筒を手にしたまま、エイムがキリの背中にピョンと跳び乗る。
「おっと……ははっ、凄いジャンプ力だね」
 それを危うげなく受け止めて、キリは感心したように笑った。
 ……そんな光景に。
「アナタ、無茶苦茶エイムちゃんを甘やかすわね……」
 メイは思わずそんな感想を述べる。



「一番エイム、歌うです!」
 ダン! と空のコップを置いたエイムが突如そんなことを言って椅子の上に立った。
「る~♪ ららら~♪」
 そして、椅子の上で器用にバランスを取って踊りながら歌い始める。
「がははっ! いいぞ~!」
「こりゃ将来は歌姫だな!」
「はっはっはっ、結局嬢ちゃんは将来何になるってんだい!」
「決まってらぁ、歌姫で魔王ないい女よ!」
「違ぇねぇや!」
「です~♪」



「どうしたの? そんなに慌てて」
 なぜかやたら動揺しているキリがおかしくて、メイはクスクスと笑った。
「えーと……その……」
 キリは、言いにくそうに頬を掻く。
「お酒が入ると更に色っぽくなって綺麗だなって思って……見惚れてたんだ」
 恥ずかしそうに言うキリに、メイも自分の頬が急激に熱を持ち始めたのを自覚した。
「そ、そう……ありがとう」
 恐らく、酒以外の理由でメイの顔は赤みを増していることだろう。



──しかし、そんな穏やかな旅は。



「お主は、キリの記憶が戻ることを望むか?」



「って、エイムちゃんを殺させるってことですか……!?」



「お別れの日は、近いのです」



──長くは、続かない。



「魔王を……殺す……!」



──交錯する過去。



「じゃあな! お前のおかげで、人族も悪かねぇって知ることが出来たぜ!」



「皆さん! 絶対に! 魔王を倒し……」



「まおう……ころす……」



「この世界を……こんな悲劇がなくなるよう、救ってくださいまし……!」



──かつてキリが体験した、出会いと別れに触れて。



「私は、救われた!」
 そう、救われたのだ。
「アナタの言葉に! アナタの存在に!」
 本当の本当に、救われたのだ。



──メイが選び取る運命は。



「ししょー!」
「………………あぁっ?」
 奇妙な単語に、桐は思わず大きく眉根を寄せてしまった。
「師匠? 今、俺のことをそう呼んだのか?」


──そして。



「さよなら、です」



──彼女は、魔王となった。



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