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受賞歴:
2004年、第1回スクウェア・エニックス小説大賞『入選』
2008年、第5回トクマ・ノベルズEdge新人賞『徳間デュアル文庫特別賞』
2017年、第11回HJ文庫大賞『銀賞』
2017年、ジャンプ小説新人賞’16 Winter 小説フリー部門『銀賞』
2017年、第30回ファンタジア大賞 『金賞』

2019-12

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過去SS更新:スタンプ・デッド昔話 ~桃太郎 episode2 冥府への旅立ち~

 心優しい朱麗さんとカプタインさんの間で、彗くんはすくすくと育ちました。
 やがて彗くんは、立派な青年に成長します。
 大きくなった彗くんは、ある日朱麗さんとカプタインさんにこう言いました。
「都の方じゃ今、鬼が暴れているらしい。だから、俺はそれを退治しに行ってこようと思う」
 それを聞いた朱麗さんは、大層驚きました。
 なぜならばここは都から程離れた田舎村です。
 メディアも発展していないこの時代、彗くんが都の情報を知りえる手段は風の便りに聞く噂話くらいのもの。
 しかし朱麗さんは、そんな噂話聞いたこともありません。
 彗くんよりもご近所付き合いの多い朱麗さんが知らない情報を、彗くんが握っているわけはないのです。
 そこで朱麗さんは、可愛そうな人を見る目を彗くんに向けました。
「そうか……彗君、ついに妄想と現実の区別がつかなくなったか……」
「ついにってなに!? 別に今までそんな兆候あったわけじゃないだろ! つーかそういうもんなの! この時代都では鬼が暴れてるもんなの!」
「ふむ、そういうものなのか」
 あっさりと朱麗さんは頷きます。
 「そういうものだ」と言われてしまっては仕方ありません。
 朱麗さんは皆のために自分をある程度抑えることができる、"one for all, all for one"精神溢れる死神さんなのです。
 そして、朱麗さんはあっさりと気持ちを切り替えました。
 過ぎたことは気にしない、それこそが美しさを保つ秘訣なのです。
「では、道中お腹がすくこともあるだろう。これを持って行くといい」
 そう言って、朱麗さんは彗くんに袋を手渡しました。
「これは……」
「君が入っていた桃だ」
 袋の中身は、あかさまに腐乱臭が漂い最早原型をとどめていない桃でした。
「何年ものだよこれ! あからさまにもう腐ってんだろ!」
「ふむ……こういう時のための非常食として君は桃から生まれてきたのではないのかい?」
「そんなわけあるか!」
「そうか。ではこの桃は、これまで通りへその緒代わりとしてとっておくとしよう」
「とっておくのかよ……」
 朱麗さんは袋を大事そうにしまいました。
 自分のお腹を痛めて彗くんを生んだわけではない朱麗さんですが、その代わりに自らの鎌を(果汁で)汚してまで切り裂いたのがこの桃です。
 こんな腐った桃でも、朱麗さんにとっては彗くんとの大切な思い出なのです。
 決して、「これ巨大果物コンテストに出したら優勝できるんじゃね?」とか思いつつもその機会を逸しているうちに腐ってしまったわけではないのです。
「それでは彗君、これを持って行くといい」
 朱麗さんは再度、今度は別の袋を彗くんに渡します。
「これは……」
「バナナチップスだ」
 今度の袋の中身は、スライスされた乾燥バナナでした。
「なんでバナナチップスなんだよ! ここはきび団子な場面だろ!」
「何を言う、バナナは総合栄養食だぞ?」
「そんなの関係ないんだよ! しかもなんでチップスなんだよ!」
「そのほうが日持ちするだろう」
「変な気遣いはいらんわ! ていうかきび団子!」
「なぜそんなにきび団子にこだわるんだ。きび団子で何日生きられる? バナナチップスなら一袋あれば3ヶ月は生き抜くことが可能なんだぞ?」
「無理だよ普通に! そういうもんなの! もたなくてもここはきび団子なの!」
「まぁまぁすーやん、ほらこれ」
 横から、今度はカプタインさんが彗くんに袋を手渡しました。
 その袋はビニールで、側面には”Family Mart”などと印刷されています。
「そう言うやろうと思て、ワイがさっきコンビニで買ってきといたったよ」
(出来合いかよ、しかもコンビニの……しかしコンビニにきび団子って売ってんだ……ていうか時代考証無視にも程があるだろ……)
 色々と思うところはありましたが、彗くんは素直にコンビニのきび団子を受け取っておくことにしました。
 ここら辺で妥協しておかないと、永久に旅立つことができないかもしれないと踏んだからです。
「さぁ、これも持って行くといい」
「……わかった。ありがとう」
 受け取らないと外に出してくれない雰囲気を醸し出していたため、彗くんは諦めてバナナチップスも持って行くことにしました。
「よし、では衣装も私が用意してあげよう。鬼退治に行くというのにそんなTシャツと短パンなんて格好もないだろう」
「俺どんだけラフな格好なんだよ! ていうかだから時代考証!」
 実は用意してあった鬼退治衣装に身を包み、彗くんはいよいよ出発します。
 出発の直前、朱麗さんは彗くんに大きな旗を渡しました。
 なんだかんだで、準備は万端です。
「これは……」
 彗くんは渡された旗をまじまじと見ます。
 ”鬼が島まで”という文字と大きな矢印、そして親指を立てた手の絵が同じく大きく描かれていました。
 見間違いかもしれないので、彗くんは目をこすりもう一度よく旗を見てみます。
 すると彗くんは、やはり先程のは見間違えであったことに気付きました。
 なんと”鬼が島”だと思っていた文字は、実は”鬼が鳥”だったのです。
 それがただのミスだったのか、それとも朱麗さんなりの高度がジョークだったのかは彗くんには知りようもありません。
 ただ、彗くんは静かに視線を朱麗さんに戻しました。
「……何これ」
「ヒッチハイクする時に便利だろう?」
「ヒッチハイクはしないんだよ! 歩いていくの!」
「しかし、歩くて行くと疲れるだろう。履き慣れていない靴だと靴擦れを起こす可能性だってある」
「慣れてる靴なので大丈夫なんだよ! ていうかこの時代草鞋とかそんなのだろ!」
「そうか……しかしまぁ、何かの役には立つかもしれない。持って行って損はないだろう」
「単純にこれを持つことに費やす体力分損だと思うんだが……」
 しかし彗くんは、これも素直に受け取っておくことにしました。
 出発前から、もう既に彗くんは疲れ始めていたのです。
 こうして朱麗さんとカプタインさんに見送られ、彗くんはヒッチハイク用の旗を背にバナナチップスとコンビニ製のきび団子を持って歩き始めました。
 そしてこの一歩こそが、後に幾度となく苦難を乗り越え様々な伝説を残すことになる彗くんの第一歩だったのです。





つづく(はず)

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