FC2ブログ
ファンタジア文庫『世話好きで可愛いJK3姉妹だったら、おうちで甘えてもいいですか?』11/20発売!
JK文庫『異世界からJK転生した元妹が、超グイグイくる。』11/30発売!
JUMP j BOOKS『ぼくたちは勉強ができない 未体験の時間割』12/4発売!

スクウェア・エニックスノベルス『スタンプ・デッド』1~5巻&コミック版、『太陽で台風』1・2巻発売中!
ガンガンノベルズ『魔法少女アーヤ☆アミー』発売中!
徳間デュアル文庫『魔王さんちの勇者さま』1~4巻発売中!
徳間文庫『欠陥妖怪住宅』、『パラレル家族計画』発売中!
ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ『ブチ切れ勇者の世界征服』1~2巻発売中!
HJ文庫『カンスト勇者の超魔教導』1~3巻発売中!
ファンタジア文庫『お助けキャラに彼女がいるわけないじゃないですか』1~3巻発売中!
JUMP j BOOKS『ぼくたちは勉強ができない 非日常の例題集』発売中!

受賞歴:
2004年、第1回スクウェア・エニックス小説大賞『入選』
2008年、第5回トクマ・ノベルズEdge新人賞『徳間デュアル文庫特別賞』
2017年、第11回HJ文庫大賞『銀賞』
2017年、ジャンプ小説新人賞’16 Winter 小説フリー部門『銀賞』
2017年、第30回ファンタジア大賞 『金賞』

2019-12

«  | ホーム |  »

過去SS更新:スタンプ・デッド昔話 ~桃太郎 episode3 イレギュラーとの邂逅~

 家を出発した彗くんは、順調に鬼が島へと向かっていました。
 しかし、彗くんには一つ不安があります。
 それは、鬼を相手にするにあたり彗くん一人で戦えるのだろうかということでした。
 もちろん鬼退治を決意するくらいに彗くんは腕っ節に自信がありましたが、鬼は大層強いと聞きます。
 けれども、彗くんの不安はそう大きいものでもありませんでした。
 なぜならば、彗くんには予感があったのです。
「なんかこの辺で、仲間に出会えそうな気がする」
 具体的に言うと、彗くんは犬っぽい何かと出会える予感が猛烈にしていたのです。
 彗くんは、目を皿のようにして犬を探します。
 仲間になる犬はどこにいるのだろう、どんな犬なのだろう、血統書はついているのだろうか。
 彗くんは、まだ見ぬ仲間・犬について想像を膨らませます。
「あの……」
 そして、想像と犬探しに集中するあまり彗くんはその声に気付きませんでした。
「あの」
 今度は先ほどよりも少し大きな声で、呼びかけがありました。
 しかし彗くんには聞こえません。
 なぜならば彗くんの耳は今、どんな犬の情報をも聞き逃すまいという方向に集中しているのです。
 犬の鳴き声以外のものなど、聞こえるはずもないのです。
「え、そうなんですか……? えと、じゃあ……ワン!」
 苦し紛れの犬の鳴き真似に、しかし今度彗くんは猛烈な反応を見せました。
 尋常ではない速さで振り返り、犬はどこだ、犬はどこだと辺りを見回します。
 しかし、どこにも犬は見当たりませんでした。
 そこにいるのは、死神見習いくらいのものです。
「あの……」
 振り返った彗くんにホッとした表情で、死神見習いは再度呼びかけを試みます。
 しかし未だ犬探しモードに入っている彗くんにはやはりその声は届きませんでした。
「えー……? ワ、ワン! ワンワン!」
 必死に犬の鳴き真似をすると、今度こそ彗くんの目はそちらに向きました。
 再びホッとした表情になる死神見習いとは対照的に、彗くんはあからさまに失意の表情です。
「なんだ、人間かよ……」
 彗くんのあまりの落胆ぶりに心を痛めつつも、ようやく彗くんの感心が自分に向いたチャンスです。
 ここぞとばかりに、死神見習いは彗くんに話しかけます。
「あの、私とってもお腹がすいてるんです!」
「そうか、それはよかったな」
 死神見習いの言葉は音声としてはようやく届くようになりましたが、しかしその意味までは彗くんの頭に到達しませんでした。
 たとえ今死神見習いが「あなたを殺させてください」と言ったところで、彗くんの返事は同じだったことでしょう。
「それじゃあな」
 死神見習いからはさっさと興味をなくし、彗くんは歩いていこうとします。
「ま、待ってください~」
 ここで去られるわけにもいかない死神見習いは、最後の力を振り絞って彗くんの足にすがりつきます。
「……ん?」
 そこで彗くんは、ようやく犬探しモードから現世に舞い戻ってきました。
 自分の足にすがりついている死神見習いに目を向け、ぎょっとした表情になります。
 なにせ、彗くんの認識からすれば何の脈絡もなく唐突に自分の足を死神見習いが掴んでいたのですから。
 しかしあからさまに力尽きかけている死神見習いに、彗くんも心配そうな表情になりました。
「おい、どうした? 持病の癪かなんか?」
「いや、だからお腹がすいてしまって……何か食べるものとか持っていませんか?」
「食べるもの……?」
 彗くんは、チラリと自分の腰の袋に目をやります。
 そこには、カプタインさんがコンビニで買ってきてくれたきび団子が入っているのです。
 明らかに「持っていますよ」という表情の彗くんに、死神見習いの目が輝きます。
 しかし、返す彗くんの表情は困ったようなものでした。
「いやでも、これは犬にあげるようのものだしな……」
「お願いしますよ~。あなたの犬にでも何でもなりますから~」
 生きるか死ぬかの瀬戸際で、死神見習いも必死です。
 鬼畜系の主人公ならば喜んで食いつく場面ですが、しかし彗くんはあいにくエロゲではなく昔話の主人公でした。
 そこで、彗くんは天啓のように思い出します。
「そうだ! きび団子は無理だが、バナナチップスならある! それでいいか?」
「はい、文句があるはずもありません!」
 パッと輝く笑みを浮かべた死神見習いに、彗くんはバナナチップスの袋を手渡しました。
 まったく世の中何が役に立つかわかったもんじゃない、と彗くんはしみじみ思います。
 そして彗くんは、まだバナナチップスを食べている死神見習いを横目に立ち上がります。
「それじゃあな。今度からは行き倒れる前になんか食えよ」
「あ、待ってください!」
 歩き始めた彗君を、死神見習いが呼び止めます。
 犬探しモードに入っていない彗くんは、今度はちゃんと振り返りました。
「まだ何かあるのか?」
「あの……お急ぎなんですか?」
「あぁ、まぁ。一緒に旅してくれる犬探さなきゃならないし」
「なーんだ、それだったらもう大丈夫ですよ」
 死神見習いは、安心したように微笑みます。
「? この辺に使えそうな犬でもいるのか?」
「はい」
 にっこりと笑って、空腹を満たした死神見習いは立ち上がりました。
「さっきも言ったじゃないですか。私が犬になります」
「……そんなもん有言実行しなくていい」
「いえ、有言実行こそが死神への第一歩です。というわけで私は、一生犬としてあなたの傍にいます!」
「待て、一生ってなんだ。最悪鬼退治まででいい」
「そういうわけにはいきませんよ。というわけで、よろしくお願いしますね!」
「待て待て待て待て」
「いえ待ちません! さぁ行きましょう、いざ鬼が島!」
 すっかり元気になった死神見習いは、彗くんを先導するように道を歩き始めます。
 こうして彗くんは、その一生を死神見習いと共に過ごすことになったのでした。



つづく(のだろう)


スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://hamubane.blog.fc2.com/tb.php/1430-db342702
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

プロフィール

hamubane

Author:hamubane

たぶんライトノベル作家的なもの


Twitter

既刊情報

最新コメント

最新記事

カレンダー

11 | 2019/12 | 01
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

月別アーカイブ

カテゴリ

ジャンルランキング

[ジャンルランキング]
日記
229位
ジャンルランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
90位
サブジャンルランキングを見る>>

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR