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受賞歴:
2004年、第1回スクウェア・エニックス小説大賞『入選』
2008年、第5回トクマ・ノベルズEdge新人賞『徳間デュアル文庫特別賞』
2017年、第11回HJ文庫大賞『銀賞』
2017年、ジャンプ小説新人賞’16 Winter 小説フリー部門『銀賞』
2017年、第30回ファンタジア大賞 『金賞』

2019-09

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他SS更新:ペイシェント彗③ ~熱すぎたあの子~

「じゃ、ボクは氷とか持ってくるから。すーちゃんのこと、よろしくね」
「はい、了解です」
 彗をベッドに寝かせた後、弓はすぐに部屋を出て行った。
 残された秋乃は、軽く室内を見回す。
「へぇ、これが昇神先輩の部屋……」
 小さく呟きかけ、言い終わる前に秋乃の顔が真っ赤に染まった。
(しょ、しょしょしょしょ昇神先輩の部屋!?)
 今更ながらにその事実を認識し、秋乃の鼓動は一気にトップギアまで上がる。
(しかも二人きり!? 何これ!?)
 秋乃の頭の中は混乱を極めていた。
 なまじ回転が速いだけに、思考が次々に進んでいく。
(うわわ、どうしよう……あ、ていうか昇神先輩の寝顔…………………………………………はっ、見とれてる場合じゃない! ん、場合じゃない? じゃあ今はどんな場合? 辻樹先輩は「よろしくね」って言ってたけど……じゃあ、別に今私は何もしなくていいんじゃない? ていうか、寝顔を観察するのってむしろ正しくない? 苦しそうにしてたりしないか確認しなきゃいけないわけだし。正しいよね? うん、正しい正しい)
 という結論に至り、秋乃は適当に椅子を引っ張ってきてベッドの隣に座った。
 何をするでもなく、彗の顔を眺める。
 すーすーと規則正しい寝息だけが、室内に響いていた。
(うわ、なんていうか、これはかなりクるものが……)
 とっくにトップギアだったはずの心臓が、さらに高鳴っていく。
(こ、これはアレ? やっぱりお約束どおり、く、くく唇を奪いにいくべきですか? いくべきですよね? でもお約束どおりだとすると、昇神先輩が直前で目を開けちゃうんじゃあ……でもそうなった場合、「こうやったら私に風邪が移って、昇神先輩は治るかと思いまして」とか天然っぽく言っとけばよくない? あれ、でも私って天然キャラだったっけ?)
 加速、加速、加速。
 思考と鼓動が加速していく。
(いく? いくの? いっちゃうの? でも辻樹先輩が「すぐに気付くはず」って言ってたし、でもそうなったら「こうやったら私に」……って、なんか思考ループしてる? オッケー、もうこの際他のことを考えるのはやめにしよう。いくかいかないかの二択だ。いく? それとも、いく? あ、ダメだこれもう一択だ)
 ヒートアップしすぎて焼き切れ寸前。
 逆に思考が鈍っていく。
 秋乃の体が徐々に前へと傾いていき、ついに腰が浮いた瞬間。
「お待たせー」
 ドアが開き、弓が部屋の中に入ってきた。
「……………………」
 少し腰を浮かせた体勢で固まったまま、秋乃は動かない。
「秋乃ちゃん?」
 弓の呼びかけに、呼応するように。
 秋乃の体がゆっくりと、今度は横向きに傾いた。
「うわ!?」
 持って来ていた洗面器を素早くその場に置き、弓が神速で秋乃を支える。
「ちょ、どうしたの? 風邪うつったとか? って、それちょっと早すぎない?」
 脳をフルに使っていた状況でいきなり外部からの刺激が発生したため、処理しきれなくなっただけではあるのだが。
 弓の手の中で目を回している秋乃が持つは、彗よりもよっぽど高くなっていた。
「何か問題でも?」
 開いたままの扉から真が顔を出す。
「あぁ、なんか秋乃ちゃんが倒れちゃって……」
「そう」
 とだけ言って歩み寄り、真は秋乃の顔を覗き込む。
「……たぶん、脳がオーバーヒートしただけだから。とりあえず寝かせておけばいいと思う」
 的確な判断だった。
「あぁ、じゃあ来客用の部屋に……」
「いや。そこは今、死之神円花さんの部屋になってるから。昇神彗さんの両親の部屋を使わせてもらうのがいいと思う」
「……まこちゃ、、すーちゃん家に来たことあるの?」
「直接は今回が初めて」
「そ、そう……」
 言いながら、真は秋乃を担いだ真を彗の両親の部屋に誘導する。
 数え切れないほどこの家に上がったはずの弓よりも、なお慣れた足取りだった。



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