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受賞歴:
2004年、第1回スクウェア・エニックス小説大賞『入選』
2008年、第5回トクマ・ノベルズEdge新人賞『徳間デュアル文庫特別賞』
2017年、第11回HJ文庫大賞『銀賞』
2017年、ジャンプ小説新人賞’16 Winter 小説フリー部門『銀賞』
2017年、第30回ファンタジア大賞 『金賞』

2019-09

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他SS更新:ペイシェント彗④ ~さらに熱く~

「あ゛~……」
 ゆっくりと、彗は目を開ける。
 頭がぼーっとしていた。
「……あ?」
 胸のあたりの肌に直接当たる冷たい感触に気付き、意識はクリアになった。
 目を向けると、胸に聴診器が当てられているのが確認できた。
 そして、それを持っている真のことも。
「……何やってんの?」
「診察」
 彗の目覚めにも、気付いていたのかいなかったのか。
 淀みなく真は応えた。
「いや、だからなんでそんなことしてるんだよ……」
「大丈夫、医師免許とか持ってないから」
「そ、そうか……」
 妙に自信に溢れているような気がする(調子自体はいつもの淡々として抑揚の欠けたものだったが)真の声に、一瞬納得しかける。
 が、今のセリフをもう一度頭の中で繰り返し。
「……いやそれまったく大丈夫な理由になってないだろ! むしろ凄い普通のことだから! そんでそういうこと言ってるんじゃないし!」
 ツッコミと共にガバッと起き上がる。
「意外と元気」
 あまり意外そうじゃない顔で、真が言う。
「ていうか、元々そこそこ元気だからな……」
「でも、せっかくみんなで来たし。ゆっくりしておけばいいと思う」
「ぬ……」
 確かにやり方はどうあれ、みな善意からやっていることなのであろう(真に関しては若干微妙)。
 むしろだからこそタチが悪いという説もあるが。
「……お前が言うなよ」
 とりあえず、小さくそう言うだけでとどめておいた。
「たぶん、そろそろ死之神円花さんが……」
「彗さん!」
 はかったかのようなタイミングで、部屋の中に円花が入ってきた。
 右手には液体の入ったコップを持っている。
「ほら、卵酒ってやつを作ってみました! 真さんに作り方調べてもらったんです!」
 嬉しそうに、しかしコップの中身をこぼさないよう慎重な足取りで円花が歩み寄る。
「ん、あぁ。サンキュ」
 さっきの真とのやり取りもあったからか、彗は素直にコップを受け取った。
「卵酒とは、今時珍しいな……」
 彗も、聞いたことはあるが実際に見るのは初めてだった。
 だから……あるいは、風邪のせいで思考能力が下がっていたこととも合わさって。
 彗は、気付かなかったのである。
 その卵酒が、一般的なものよりも随分緑がかっているという事実に。
 コップに口をつけた瞬間に感じる香りが、明らかに異臭であることに。
 一口目を口に含む段階に至ってなお、気付かなかったのである。
 喉の奥に流し込んでから、ようやく気付いた。
「ぶはっ!?」
 既に口の中に入っていた二口目を吐き出す。
「ちょ、お前、これ……濃っ!」
 喉を通るドロリとした感覚。
 瞬時に来る胸の熱さ。
 そして、襲ってくる吐き気と強烈な匂い。
 間違いなくその卵酒は、通常ではありえないほどのアルコール濃度を保持していた。
「濃い? 私、何か作り方間違えましたかね?」
「作り、方、っつーか……材、料の問題、だ……おま、これ、日本酒じゃ、ねぇだろ……」
 はっきりと発音できない舌で、しかししっかりとツッコミだけは入れておく。
「お酒なら何でもいいのかと思ってたんですが……違うんですかね?」
「んなわけ、あるか……つか、いったい、何使ったんだ……」
「えっと、何ていいましたかね……アブ……虻?」
「アブサン?」
 「うーん」と唸る円花に、横から真が尋ねる。
「あ、そうですそう!」
 パッと顔を上げて円花は指を立てた。
「銘柄は?」
 引き続き真が尋ねる。
「んー、なんか化学の授業で出てきそうな名前の……」
「デリリウム、かな」
「そうそう、それです! すごいですね!」
 円花の賞賛を受けつつ、真は彗の方に向き直った。
「アブサン。アルコール度数は60%以上。ウォッカなんかよりも余裕で高い」
「マジ、か……」
 ただでさえ絶望的な表情となっている彗に、更なる真からの追撃がかかる。
「さらにデリリウムというと、昔ながらの製法で酒造されているはず。原料であるニガヨモギが神経系を侵すという理由で、現代では製造禁止になっている。ただ、密造はしているらしいから今回のはそっちかも」
「なんでそんなもんがウチにあったんだよ……」
「あぁ、それがですね」
 円花が説明を加える。
「ウチに、お酒自体が全然なかったんですよね。だから買いに行ったんですけど、その途中でカプさんに会いまして。事情を話すと、「じゃあこれあげるわ」って言ってくれたんです」
「ふざ、け……」
 そこまで言って、彗の上体がグラリと揺れる。
『あ』
 そして、倒れた。
 真と円花の声が重なる。
「たぶん、元々風邪気味だったところにアルコールが回ったことが原因」
「はぁ、それは……」
 真と円花の会話がわずかに耳に入ってくる中、彗の意識は完全に落ちた。
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