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第11回HJ文庫大賞『銀賞』受賞作です!

2017-10

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なんちゃってダイジェスト~ブチ切れ勇者の世界征服 2~

どうも、はむばねです。
いよいよ明後日発売!
そろそろ気の早い本屋さんだと並んでるところもあるんじゃねーの!
というわけで、なんちゃってダイジェストはじめるよー\(^o^)/






――元救世主、須藤優武。



「よし、じゃあ決まりだな」



――現、魔王軍参謀(形式上)。



「次はレハット王国を攻め落とすか」



――世界征服、継続中。



「いいか、モア」
 そこで、キリッと優武は表情を改めた。
「見てみろ」
 優武は、足元に散らばる紙飛行機のうちいくつかを拾って広げた。それらには、「フェド連邦」「」ウブッツ王国」「ヴィーン公国」などと書かれている。
「ここから導き出される、今レハットに攻めるべき理由は三つ」
 モアに右手を向け、指を一本ずつ立てていく。
「一つ、レハットと書かれた紙飛行機が。二つ、一番遠くまで。三つ、飛んだ」
「それ一つじゃろうが!? ちゅーか、やっぱり適当じゃ!?」

「というわけで、今から早速レハットを攻めようと思う」
「それはそれとして無理と言うとろう!?」
 一転してトーンを下げた優武に、今度はモアの口調が強まる。
「しゃあねーな……じゃあ、ちょっと意見を改めよう」
 優武は静かな口調で溜息を吐いた。一旦は怒りが収まったらしい様子に、モアは密かに胸を撫で下ろす。
「とりあえずは宣戦布告だけでいいわ」
「宣戦布告したらそれもう戦争じゃろうが!?」
 特に改まっていなかった優武の主張に、再び叫ぶモアだった。
「チッ……こっちがここまで譲歩してやってるというのに……」
「一応言うとくがお主、ここまで半歩たりとも譲っとらんからな……?」

「飛竜に乗るということは、遠出ですか?」
 ホークをザクッと地面に突き立てたヘィドが、竜舎から飛竜を連れ出してきた。
「あぁ、ちょっくらレハット王国を滅ぼしにな」
「滅ぼさんからな!?」
 ヘィドから手綱を受け取って飛竜に跨がり、ちょっと買い物に行ってくる的なノリで物騒な事を口走る優武。
「お主、本当に今回の目的親善大使だけなんじゃろうな……?」
 優武に手を引かれてモアも飛竜の上に移動するが、その表情は不安いっぱいである。
「任せろ、有無を言わせないくらいの友好を結んでやる」
「友好なら有無は言わせてやらんかい……」



――向かうはレハット王国、負う役割は親善大使。
――その本心は、元勇者のみぞ知る。



「いやー、わからんぜ?」
 ニヤリと笑うキール。
「魔神はともかく、魔王が出てきたことはありましたからね」
 のほほんとした調子で、頬に手を当てたリナイスはどこか懐かしげだ。
「また魔王か!? フットワーク軽いのぅ先代!」
「あいつは、俺らの危険度を認識するや完全に殺しに来てたからな。今の魔王軍に足りないのは、そういう殺伐さだ」
「そ、そうかも知れぬのぅ! まぁ、それはともかく早速野宿の準備を始めるとしよう! 妾は何をすれば良いかの!」
 妙な地雷を踏む前に、あからさまに話題を逸らすモアであった。

「ちゅーか、山菜や木の実の類ならばお主も採っとるではないか」
 猪の首根っこを掴んでいる方の手ばかりに目がいきがちだが、反対方向に目を向けるとリナイスはもう片方の手でマントを袋状にして押さえていた。そこには、木の実や山菜がこんもりと盛られている。
「あぁ、これは副産物のようなものですね」
「副産物?」
 リナイスの言葉が理解できず、モアが首を傾げる。
「この猪さん、この森のヌシ的なものだったみたいなんです。それを倒したわたくしへの敬意なのか貢物なのか、周りの動物たちが持ってきてくれたんですよ」
「それ倒してもうて大丈夫なやつじゃったんかのぅ!?」

「お主、その身体で優武を誘惑しておるわけじゃろう?」
 透明な湯の中で、一糸まとわぬ姿だからこそわかる。単に局所が大きいだけではなく、出るところは出ていながら全体的にスリムという最早理不尽とすら言えるリナイスのスタイルは、女性であれば羨まない者はほとんどいないことであろう。
「ゆ、誘惑だなんてモアちゃん!」
 先程までの余裕はどこへやら。
「わたくしはそんな、ただ……」
 明らかに湯による体温上昇とは別に、リナイスの顔は赤く染まっていた。
「優武様が性的に興奮してわたくしを孕まさんとする情動を抑えきれなくなるよう扇動しようとしているだけです」
「妾、その行為を「誘惑」という言葉以外で表現する術を知らんのじゃが……いやすまぬ、やはり「誘惑」などという言葉では表現しきれぬかもしれぬ……」



――かつての勇者一行のように、地道に進む馬車の旅。



「此奴は優武。元勇者で、今は妾の部下じゃ。その隣におるのがリナイス、優武と共に旅をした仲間で同じく妾の部下となっておる」
 優武たちを紹介するモアは、お気に入りのオモチャを自慢する子供のようだ。
「どうも。先代魔王含め、数多くの魔族をぶっ殺した須藤優武です」
 挑発的な……というよりも挑戦的な笑みと共に、優武が自己紹介する。
「こりゃお主、わざわざそのような言い方をせずとも……」
 モアが窘めるも、無論その程度で表情を改める優武ではない。
「ほっほっほっ。勇者殿は、噂以上に好戦的な方のようだ」
 しかし老人は、変わらず柔和な笑みを浮かべたままだった。
「初めまして。私はココ。先々代も先代も差し置き、無様に生き延びておる老いぼれですじゃ」



――多少寄り道すれども、順調な旅路。
――……の、はずが?



「脱獄といえば、色仕掛けじゃ!」
 モアが力強く宣言する。
「様々な物語でも成功を収めている方法じゃからな! 所詮男なぞ、女の魅力の前では無力! というわけで……」
 続けて、リナイスの方を向こうとしたところで。
「ほー。そうか、頑張れモア」
「頑張れ、ちびっ子」
「頑張ってください、モアちゃん」
「え、妾?」

「ひゃっ!?」
 と、リナイスの短い悲鳴。
 そちらに目を向けると、一点で目を止めたリナイスが頬を引き攣らせていた。
「どうかしたのかえ?」
「へ、変態です!」
「なんだ、いきなり自己紹介なんてして」
「変態じゃないです!?」
 優武の相槌に、リナイスの顔がグルンと優武の方へ向く。
「変態なのか変態じゃないのか、どっちなんだ」
「わたくしは変態ではありませんが、あそこに変態がいるんです!」

「ふむ。稼ぐといっても、どうやってじゃ?」
「どうやってって、そりゃ働いて」
 モアの質問に、何を当たり前の事を、といった調子で優武が返す。
「お、おぅ。意外と真っ当じゃのぅ」
 むしろ、真っ当すぎて逆に戸惑うモアである。
「お主の事じゃから、てっきり金持ちの家でも襲撃したりするのかと思うとったのじゃが」
「そんなことをしたらますますこの街で動きにくくなるだろうが。目的を見失うな」
「あぁ、やはり倫理的な理由でやらないわけではないんじゃな……」
 モアの目がどこか遠くを見るようなものになる。
「倫理観なぞ、数年も前に捨て去ったからな」
「勇者時代から!?」
「なにせ人んちに勝手に侵入して、いるものいらないものを勝手に拝借するのが勇者の心得だ」
「空き巣じゃ!?」
「失敬だな。住人がいようが構わず決行するぞ」
「強盗じゃ!?」



――予定外の状況、舞い込むトラブル。



「話の根拠とか、詳細とかは省略するぜ。もうすぐ、嫌でもわかるからな。ここには、取引に来た。あぁ、まずは聞くだけでいい。この話を受けるかどうかは、実際に事が起こってから判断してくれ」
 完全に二人が付いて行けていない中、優武は一人淡々と話を進める。
「こちらが提供するのは、防衛戦力三人だ。世界最高クラスのな。代わりに要求するのは、三点」
 優武が、ローク王に向けて右手を突き出した。
「一つ。この騒動が終わったら、改めて俺たちをセント王国代表として迎えること」
 人差し指を立てる。
「二つ。事が始まった直後、しばらくフィンドを借りたい。その間、アンタ自身が現場のトップとして指揮を取ってくれ。これについては、むしろ望むところだろう?」
 笑みをイタズラっぽいものに変えながら、二本目の指。
「三つ」
 三本目、薬指を立て。
「今回の首謀者は、こっちが貰う」
 優武がそう告げるのと、キールが「報せ」を持ってきたのはほとんど同時だった。



――誰かの手のひらで舞うかのように、事態は転がっていく。



「……わかっておるわ」
 恐らくはわかっていない、悔しげな表情でモアが返してくる。
「んで? 結局どうすんだ? 俺が行ってこようか?」
 その問いへの答えはわかっていながら、優武はあえて尋ねた。
「……妾が、行く」
 予想と違わぬ、回答。
「そうか、なら……任せた」
 優武が、モアの頭の上に手を乗せる。
「うむ」
 頷き、モアは優武の指した方向へと飛び立った。



――そして問われる。



「それでも、妾は……」
 けれども思い出すのは、魔族と人間が共に笑う合う、あの光景。
「妾は、そのような事は望まぬ……」
 その笑顔を、壊したいとは思わなかった。
「ヘィドもティルも……皆も、きっと望んではおらぬ……」



――『魔王』の、在り方。



『随分と信頼しているようだがな……あれは、かつて我らの同胞をほとんど滅ぼした魔族の敵だぞ?』
「そ……ガフッ」
 言いかけて、咳き込む。衝撃で、激痛が走る。
「そうかも、しれぬの……」
 自分の意志とは無関係に、顔が歪む。
「されど……そんな輩を、信頼してこそ……妾の、理想に、一歩……近づくと、いうものであろう?」
 それでも、笑う。



――それを成すのは力か経験か、あるいは信念か。



『魔王だ』
 端的に、単純に、そう答えた。
(これが、魔王……)
 事ある毎に、モアが自らをそう称している存在。
(じゃとすれば、妾は……)
 初めて。恐らくこの瞬間初めて、モアはその存在と真の意味で対峙した。
(これには、なれぬ)



――悩める駆け出し魔王と。



「泣きたいに泣けるっつーのは、子供の特権らしいぜ?」
 特に優しげでもない、むしろ揶揄するような声。
 にも関わらず、不思議と安心する。全てを預けて、身を寄せたくなる。
 泣きたくなる。
「泣かぬさ」
 けれど、モアはそうしなかった。



――揺るがぬブチ切れ勇者。



「それが、妾の魔王道じゃ」



――これは、新たな道を歩み始める者たちの物語。



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コメント

1. ダイジェスト、良かったですo(^_^)o

ちょうどブチ切れ1巻を再読した後でダイジェスト版記事を拝見したので、
買わずして2巻を読んでる気になりましたw特に後半が楽しみです。

あ、4日に日野イズム氏とTwitterで少しお話させて頂きました。優しい方でした。

2. れすぽんす

>anokoさん
ちょうどいいタイミングでしたかw
本日発売、よろしくお願い致します!
なお、日野氏はリアルでも優しいイケメンです!
そのうち一緒に飲む機会とかあれば良いですね~。

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